top of page

訪問看護で買い物や掃除は頼める? できること・できないことを現役訪問看護師が解説

  • 執筆者の写真: TRUST Chiba Home Medical
    TRUST Chiba Home Medical
  • 7月31日
  • 読了時間: 8分


「訪問看護では、買い物や掃除もお願いできますか?」

これは、私が訪問看護師として働くなかで、よくいただく質問です。

初めて訪問看護を利用する方が、

「自宅に来てもらえるなら、生活のこともお願いできるのかな?」

と思うのは、とても自然なことです。


今回は現役訪問看護師の立場から、訪問看護でできること・できないこと、困ったときの相談先を分かりやすくお伝えします。


※この記事では、主に医療保険・介護保険を使った訪問看護について説明します。事業所独自の保険外サービスは、契約内容によって異なります。


結論:買い物代行や日常的な掃除は、訪問看護の対象外です


保険適用の訪問看護では、次のような家事代行は原則としてサービスに含まれません。

  • 買い物代行

  • 日常的な部屋の掃除

  • 洗濯

  • 調理

  • 日常的なゴミ出し


これは看護師の気持ちや優しさの問題ではありません。

訪問看護は、主治医の指示に基づき、利用者の自宅で「療養上の世話」や「必要な診療の補助」を行うサービスだからです。


ただし、事業所によっては、訪問看護とは明確に区別したうえで、別契約・別料金の保険外サービスを提供している場合があります。

そのため、正確には「看護師だから絶対にできない」ではなく、**「保険適用の訪問看護サービスとしては対象外」**と考えるのが適切です。


厚生労働省「訪問看護」では、訪問看護を、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療の補助を行うサービスと説明しています。


訪問看護は何のためのサービス?


訪問看護は、病気や障害があっても、住み慣れた自宅で療養生活を続けられるよう支援するサービスです。

医療処置だけを行うサービスではありません。

厚生労働省が示す訪問看護の内容には、病状の確認や医療機器の管理だけでなく、排泄・入浴の介助、清拭、洗髪などの「療養上の世話」も含まれています。

つまり訪問看護は、**「自宅での医療と療養生活を支えるサービス」**と考えると分かりやすいでしょう。


訪問看護でできること


利用者の状態や主治医の指示、訪問看護計画によって異なりますが、一般的には次のような支援を行います。

  • 血圧・脈拍・体温などの測定

  • 病状や全身状態の観察

  • 清拭、入浴、排泄などの療養上の支援

  • 服薬状況の確認や服薬支援

  • 主治医の指示に基づく点滴・注射

  • 傷や褥瘡の処置

  • ストーマや尿道カテーテルの管理

  • 在宅酸素療法や人工呼吸器などの管理

  • 日常生活動作や身体機能に関するリハビリテーション

  • 認知症の方への支援

  • 終末期・看取りの支援

  • ご家族への療養相談や介護方法の助言

  • 医師、ケアマネジャーなど関係職種との連携

実際に何を行うかは、利用者ごとの病状や生活状況を踏まえて決められます。


家事でも、訪問介護で頼める可能性があるもの


次のような日常生活上の支援は、訪問看護ではなく、訪問介護(ホームヘルパー)の「生活援助」として利用できる場合があります。

  • 利用者本人が使用する場所の掃除

  • 利用者本人の衣類の洗濯

  • 一般的な食事の調理

  • 日用品や食料品の買い物

  • 薬の受け取り

ただし、訪問介護であっても、本人の状態や生活状況、ケアプランによって利用できる範囲が決まります。「頼めば何でもしてもらえる」という制度ではありません。


厚生労働省も、訪問介護の生活援助として、掃除・洗濯・買い物・調理などを挙げています。


訪問介護でも対象にならないことがあります


次のような内容は、訪問介護の生活援助にも通常は含まれません。

  • 利用者本人ではなく家族のための家事

  • ペットの世話

  • 草むしりや庭木の手入れ

  • 大掃除

  • 窓ガラス磨き

  • 来客対応など、本人の援助に当たらないこと

電球交換や家具の移動などについては、必要性や危険性、自治体・事業所の運用によって対応が異なります。訪問看護や訪問介護で一律に対応できるとはいえないため、ケアマネジャーや地域包括支援センターへの確認が必要です。


「少しくらいなら」と個人的に対応することの問題


「牛乳だけ買ってきてもらえませんか?」

「帰りにコンビニへ寄ってもらえませんか?」

現場では、このようにお願いされることがあります。


しかし、保険適用の訪問看護と個人的な手伝いの境界が曖昧になると、次のような問題が起こる可能性があります。

  • 金銭や釣り銭をめぐるトラブル

  • 移動中や買い物中の事故

  • 事業所の契約・保険の対象外になる可能性

  • 「前の看護師はしてくれた」というサービスの不公平

  • 保険サービスと保険外サービスの混同

家事を行ったこと自体が、直ちにすべて「制度違反」になるとは限りません。


一方で、家事代行を訪問看護として扱ったり、保険請求したりすることは適切ではありません。保険外サービスとして行う場合も、訪問看護と明確に区分し、事前説明や別料金などの適切な取り扱いが必要です。


安全な療養のために行う環境調整はあります


訪問看護では、家事代行は行いませんが、安全に看護を提供するために必要な範囲で環境を整えることがあります。

例えば、

  • 水分やナースコール、必要物品を手の届く場所に置く

  • 転倒を防ぐために動線上の物を移動する

  • 在宅酸素のチューブが絡まないように整える

  • 処置を安全に行うために周囲を片づける

といった対応です。


これは部屋全体を掃除する家事代行ではなく、療養上の安全を確保するための支援です。

ただし、どこまで対応するかは利用者の状態や訪問目的によって異なります。


買い物や掃除で困っているときは?


訪問看護師自身が買い物や掃除を行えなくても、困りごとを整理し、適切な支援先と連携することはできます。


例えば、

  • ケアマネジャー

  • 訪問介護事業所

  • 地域包括支援センター

  • 自治体の生活支援サービス

  • 配食サービス

  • ネットスーパーや移動販売

  • 薬局の配達・在宅訪問サービス

  • 保険外の家事支援サービス

などが考えられます。


地域包括支援センターは、高齢者のさまざまな相談を受け、必要な制度やサービスにつなぐ役割を担っています。



現役訪問看護師として伝えたいこと



利用者さんからのお願いに対して大切なのは、単に「できません」と断ることではありません。


私は、次のようにお伝えしています。

「お困りなのですね。ただ、買い物代行は保険適用の訪問看護には含まれていません。生活に支障が出ないように、利用できるサービスがないか、ケアマネジャーさんとも一緒に考えてみましょう」


利用者さんが求めているのは、必ずしも「看護師に家事をしてほしい」ということだけではありません。


本当は、**「今のままでは生活に困るので、解決方法を一緒に考えてほしい」**というサインかもしれません。


その困りごとを見つけ、必要な支援につなげることも、訪問看護師の大切な役割です。


よくある質問


Q. 薬を薬局へ取りに行ってもらえますか?

保険適用の訪問看護サービスとして、薬を取りに行くことは原則として含まれません。

訪問介護の生活援助として薬の受け取りを利用できる場合や、薬局の配達・訪問サービスを利用できる場合があります。薬局、ケアマネジャー、訪問看護師へ相談してください。


Q. ゴミ出しはできますか?

日常的なゴミ出しは、訪問看護の対象ではありません。

訪問介護や自治体の支援を利用できる場合がありますが、本人の状態、ケアプラン、地域の制度によって異なります。


Q. 電球交換はできますか?

訪問看護の通常業務には含まれません。

自治体の生活支援、民間の家事支援、地域のボランティアなどが利用できる場合があります。地域包括支援センターやケアマネジャーへ相談してください。


Q. 訪問看護師やリハビリ職と一緒にスーパーへ行けますか?

一律に「できます」とは言えません。

屋外歩行訓練などが、主治医の指示や本人の状態、訪問看護計画に基づくリハビリテーションとして実施されることはあります。

ただし、「買い物への付き添い」が主な目的の場合、保険適用の訪問看護になるとは限りません。計画書に記載されているだけで必ず認められるわけでもないため、訪問看護事業所、主治医、ケアマネジャーなどによる個別の確認が必要です。


Q. 困ったら誰に相談すればよいですか?

担当の訪問看護師やケアマネジャーへ相談してください。

介護保険を利用していない場合や相談先が分からない場合は、市区町村の介護・福祉窓口や地域包括支援センターも相談先になります。


まとめ


保険適用の訪問看護では、買い物代行や日常的な掃除・洗濯・調理などの家事は原則として対象外です。

しかし、訪問看護師は「できません」と断るだけの職種ではありません。

利用者さんの困りごとを整理し、訪問介護、地域包括支援センター、自治体サービスなど、必要な支援につなげる役割があります。

「これは訪問看護師に相談してもいいのかな?」

そう迷ったときは、まず相談してみてください。

相談すること自体は、決して悪いことではありません。その一言から、今の生活に合った支援が見つかるかもしれません。


※制度や具体的な対応範囲は、利用している保険、自治体、事業所の契約によって異なります。本記事は2026年7月時点の厚生労働省資料をもとに作成しています。

 
 
bottom of page