高齢者の熱中症を見逃さない|「なんとなく変」に気づくポイント
- TRUST Chiba Home Medical
- 6月18日
- 読了時間: 9分

こんにちは。TRUST訪問看護ステーションです。
今回は、暑い季節に特に注意したい「高齢者の熱中症」についてお話しします。
この内容については、講義動画でも解説しています。動画で確認したい方はこちらをご覧ください。
▶ この内容の講義動画はこちらhttps://youtu.be/POI3VI9BkkM
熱中症は「高熱が出る」とは限りません
熱中症というと、
「高い熱が出る」「外で倒れる」「汗をたくさんかく」
というイメージを持たれる方も多いかもしれません。
もちろん、そのような症状が出ることもあります。しかし、高齢者の熱中症では、はっきりとした症状が出にくいことがあります。
たとえば、
「なんとなく元気がない」「食欲がない」「少し眠そう」「本人は大丈夫と言っている」「熱はない」
このような、日常の中では見過ごされやすい変化の中に、熱中症のサインが隠れていることがあります。
大切なのは、熱中症をその場で診断することではありません。
「いつもと違うかもしれない」「少し変だな」
という違和感に気づき、早めに相談や対応につなげることです。
よくある夏の一日が、熱中症につながることがあります
講義では、次のような事例を紹介しました。
ある高齢の方は、発熱はありませんでした。会話もできており、ご本人も「大丈夫」と話されていました。
ただ、ご家族から見ると、
「なんとなく元気がない」「食欲がない」「少し眠そう」
という様子がありました。
ご家族は「夏バテかな」と思っていましたが、翌日に熱中症で救急搬送となりました。
ここで大切なのは、熱がなかったことです。
熱中症は、必ずしも高熱が出てから気づくものではありません。特に高齢者の場合、症状がはっきり出にくく、周囲から見ると「いつもの夏バテ」「年齢のせい」に見えてしまうことがあります。
2024年の熱中症救急搬送では、高齢者が半数以上でした
総務省消防庁の「令和6年、5月から9月の熱中症による救急搬送状況」によると、2024年5月から9月までの全国の熱中症による救急搬送人員は97,578人でした。
そのうち、65歳以上の高齢者は55,966人で、全体の57.4%を占めています。
つまり、熱中症で救急搬送された方の半数以上が高齢者です。
また、初診時の傷病程度では、軽症だけでなく、入院が必要となる中等症以上の方も報告されています。
「少し様子を見よう」と思っている間に、状態が悪化することもあります。そのため、早めに気づくことがとても大切です。
高齢者が熱中症になりやすい理由
高齢者が熱中症になりやすい理由には、いくつかの特徴があります。
暑さを感じにくくなる
加齢により、暑さに対する感覚が鈍くなることがあります。
周囲の人が「暑い」と感じていても、ご本人は「大丈夫」「そんなに暑くない」と感じていることがあります。
そのため、エアコンを使うタイミングが遅れたり、暑い部屋で長時間過ごしてしまうことがあります。
のどの渇きを感じにくくなる
高齢になると、水分不足に気づきにくくなることがあります。
「のどが渇いていないから飲まなくていい」と思っていても、実際には体の水分が不足していることがあります。
また、夜間のトイレを気にして水分を控えてしまう方もいます。
体温調節機能が低下しやすい
暑い環境にいると、体は汗をかいたり、血流を調整したりして体温を下げようとします。
しかし、高齢者ではこの調整機能が低下しやすく、体に熱がこもりやすくなることがあります。
食事量や水分量の低下が脱水につながりやすい
食欲が落ちると、食事からとれる水分や塩分、エネルギーも減りやすくなります。
「少し食欲がないだけ」と思っていても、暑い時期には脱水や熱中症のきっかけになることがあります。
熱中症は「家の中」でも起こります
熱中症は、屋外だけで起こるものではありません。
家の中で過ごしていても、室温や湿度が高い状態が続くと熱中症になることがあります。
特に注意が必要なのは、次のような状況です。
・エアコンを使っていない
・室温が高い
・湿度が高い
・風通しが悪い
・水分摂取が少ない
・食事量が落ちている
・一人暮らしで変化に気づかれにくい
・認知症などで体調不良をうまく伝えにくい
「家の中だから安心」とは限りません。
むしろ高齢者の場合、自宅で過ごす時間が長いからこそ、室内環境の確認が大切になります。
見逃しやすい熱中症のサイン
高齢者の熱中症では、次のようなサインに注意が必要です。
・なんとなく元気がない
・食欲がない
・食べる量が減った
・眠そう
・ぼーっとしている
・返事が遅い
・反応がいつもより鈍い
・立ち上がるのがつらそう
・ふらつきがある
・尿の回数が少ない
・尿の色が濃い
・汗が少ない
・逆に大量に汗をかいている
・体が熱い
・微熱がある
・本人は「大丈夫」と言っているが、いつもと様子が違う
これらの症状があるからといって、必ず熱中症と断定できるわけではありません。
しかし、暑い時期にこのような変化が見られる場合は、熱中症の可能性も考える必要があります。
ご家族の「なんとなく変」は大切なサインです
ご家族から、次のようなお話を聞くことがあります。
「本人が大丈夫と言っていました」「熱もなかったし」「少し食欲がないだけだと思っていました」「年齢のせいかなと思っていました」「夏バテかなと思っていました」
このような言葉の中に、大切なヒントが隠れていることがあります。
特に大事なのは、
「なんとなくいつもと違う」「少し変だなと思っていた」
という感覚です。
医療的な知識がなくても、普段の様子を知っているご家族だからこそ気づける変化があります。
熱中症を見つけるために、特別な診断をする必要はありません。まずは「いつもと違うかもしれない」と気づくことが第一歩です。
ケアマネジャーさんやヘルパーさんが気づく場面もあります
熱中症のサインは、医療職だけが見つけるものではありません。
在宅生活の中では、さまざまな場面で異変に気づくことがあります。
たとえば、
・モニタリング訪問
・ヘルパーさんからの報告
・デイサービスの欠席
・ご家族からの相談
・電話での声の様子
・訪問時の表情や反応
・食事量や水分量の変化
・室温や生活環境の確認
などです。
ここで大切なのは、ケアマネジャーさんやヘルパーさんが「熱中症かどうか」を判断することではありません。
「いつもと違う気がする」「少し心配」「食事や水分が減っているように見える」
という情報を、訪問看護師や主治医、ご家族と共有することです。
小さな違和感の共有が、早期対応につながります。
迷ったら、早めに相談してください
「この症状は熱中症なのかな?」「病院に行くほどなのかな?」「自分だけで判断するのは不安」
そう感じることは自然です。
そのような時は、無理に一人で判断しようとせず、早めに相談してください。
相談先としては、
・訪問看護師・ケアマネジャー・かかりつけ医・ヘルパーさん・デイサービス職員・地域包括支援センター
などがあります。
大切なのは、誰か一人が抱え込まないことです。
熱中症は早めに気づくことで、重症化を防げる可能性があります。
熱中症かも?と思った時の初期対応
熱中症が疑われる時は、まず次の対応を行います。
涼しい場所へ移動する
エアコンが効いている室内や、風通しのよい日陰など、涼しい場所へ移動します。
室内であれば、エアコンを使用し、室温を下げましょう。
体を冷やす
衣服をゆるめ、体を冷やします。
特に冷やしたい場所は、
・首の周り・脇の下・足の付け根
です。
保冷剤や冷たいタオルがあれば活用しましょう。
水分を補給する
意識がはっきりしていて、自分で飲める場合は、水分を少しずつ補給します。
一度に大量に飲ませるのではなく、無理のない範囲で少しずつ行います。
ただし、意識がはっきりしない場合や、自力で水分を飲めない場合は、無理に飲ませてはいけません。
そのような場合は、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
すぐに救急要請を考える状態
次のような場合は、早急な対応が必要です。
・呼びかけへの反応が悪い・意識がぼんやりしている・会話が成り立たない・自力で水分が飲めない・けいれんがある・まっすぐ歩けない・強いだるさがある・症状が改善しない・吐き気や嘔吐があり水分が取れない
このような状態では、家庭内で様子を見るのではなく、救急要請を含めて早急に対応しましょう。
水分補給は「飲んでいるから安心」とは限りません
熱中症予防では水分補給が大切です。
ただし、
「何を飲んでいるか」「どのくらい飲んでいるか」「持病に合っているか」
も重要です。
たとえば、暑いからといってスポーツドリンクを大量に飲むと、糖分を多く摂取してしまうことがあります。
特に糖尿病のある方では、血糖値が高くなるリスクがあるため注意が必要です。
また、心不全や腎臓病などで水分制限がある方は、自己判断で水分量を増やすのではなく、主治医の指示を優先してください。
日常的な水分補給の基本は、水や麦茶などを活用するとよいでしょう。
大量に汗をかいた場合や、脱水が疑われる場合には、経口補水液などが役立つ場面もありますが、持病のある方は注意が必要です。
今日からできる熱中症予防のポイント
高齢者の熱中症を防ぐために、日常生活でできることがあります。
こまめに水分をとる
のどが渇いてからではなく、時間を決めて少しずつ飲むことが大切です。
起床時、食事の時、入浴前後、就寝前など、生活のタイミングに合わせると習慣化しやすくなります。
エアコンを上手に使う
「電気代がもったいない」「エアコンは体に悪い」
と考えて、暑い室内で過ごしてしまう方もいます。
しかし、熱中症予防のためには、エアコンを適切に使用し、涼しい環境を整えることが大切です。
室温を確認する
高齢者は暑さを感じにくいことがあります。
感覚だけに頼らず、温度計や湿度計を活用しましょう。
無理な外出を避ける
暑い時間帯の外出は避け、外出する場合は帽子や日傘を活用しましょう。
暑さ指数や熱中症警戒アラートも参考になります。
食事をしっかりとる
食事量が落ちると、水分や塩分、エネルギーの摂取も減りやすくなります。
「食欲がないだけ」と見過ごさず、食事量の変化も確認しましょう。
睡眠をとる
睡眠不足や疲労は体調不良につながりやすく、暑さへの対応力にも影響します。
夜間も室温に注意し、眠れる環境を整えましょう。
まとめ|「なんとなく変」をそのままにしない
高齢者の熱中症は、わかりやすい症状だけで気づけるとは限りません。
熱がない。本人は大丈夫と言っている。少し食欲がないだけ。夏バテに見える。
そのような時でも、実は熱中症の初期症状が隠れていることがあります。
今回お伝えしたい一番大切なポイントは、
「なんとなく変」をそのままにしないことです。
ご家族、ケアマネジャー、ヘルパー、デイサービス、訪問看護師、かかりつけ医。それぞれが気づいた小さな変化を共有することで、早期発見と重症化予防につながります。
「熱中症かどうか分からない」「でも、いつもと違う気がする」
そんな時は、早めに相談してください。
今年の夏も、皆さまが安心してご自宅で過ごせるよう、私たちも地域の皆さまと一緒に支えていきます。
参考文献・出典
・総務省消防庁「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」
・総務省消防庁「熱中症による救急搬送人員に関するデータ」
・厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」
・厚生労働省「熱中症が疑われる人を見かけたら」
・環境省「熱中症予防情報サイト」・環境省「暑さ指数 WBGTについて」
・日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」



